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かごしまふぁんネットメール
シリーズ「伝統的工芸品の全国大会がやってくる!」

◆第11回 「親から子への愛情や祈願を表す品」

子供の成長を願う親のやさしい思い。
いつの時代も変わらない,この気持ちを象徴するものとして,作られ,伝えられてきた伝統的工芸品が数々あります。

その一つ目が,「薩摩糸びな」。

江戸初期から作られるようになった「薩摩糸びな」は,「薩摩びな」「紙びな」とも言われていて,一般に普及している雛人形と趣の異なる独特な形をしています。

薩摩糸びなの最大の特徴は,顔がないこと。1本の割り竹を顔に見立て,その先に髪がわりの麻糸を垂らしてあります。また,襟や衣の部分は,色紙や和紙,金襴布等で作られていて,襟には,色とりどりの色紙,6〜8枚を丁寧に重ね合わせます。その上に,金襴布を重ねることにより,十二単衣さながらのとても豪華な衣のようになります。さらに,その上から,絵の描かれた和紙を,帯のように巻き付けて出来上がりです。

この絵は,一見プリントしてあるように鮮やかですが,一枚一枚思いを込めて手書きしています。

男びなには,藤の花や翁や浦島太郎などが描かれ,女びなには,梅の花や媼(おうな)や乙姫などが描かれています。手書きだから,乙姫等人物の表情が少しずつ違うため,いくつも見比べて気に入ったものを買っていくお客さんが多いそう。そのため,顔を描く時は特に気を遣うとか。髪がわりに使用している麻糸に親の愛情が込められている「薩摩色びな」。麻糸のような丈夫な子供に育ってほしいという願いが込められています。

「帖佐人形」,「垂水人形」は,粘土を型に入れて,焼いて,彩色した素朴な土人形。
これらも,子供の成長を祈って,3月と5月の節句に飾られたものです。

「帖佐人形」は,鹿児島の人形焼の窯元の中で一番古く,豊臣秀吉の朝鮮出兵の時に島津義弘が連れ帰った陶工が作ったのが最初だと言われています。義経,熊に乗った金太郎,牛若丸など数十種類が作られており,素朴な味わいがあります。

「垂水人形」は,明治の初期頃,帖佐人形にならって作られ始めたと言われています。福助や武者なども作られていますが,花嫁や動物の犬猫など優 しく美しいものが多いのが特徴。淡くて明るい色を用い,朗らかな雰囲気を醸し出しています。

次に,紹介するのは「五月幟(ごがつのぼり)」。桃太郎や加藤清正など勇武なものが描かれた幟で,5月の節句の時に,子供の健康と成長を祈って空を飾ります。縦6メートル,横0.7メートルと非常に大きく,製作に時間を要します。型紙を前もって作っていても,一日に3本作れるかどうか。

この型紙は,オリジナル原図を基に下絵を描き,線の部分を切り抜くという緻密な作業によって作られます。そして,この型紙を布にあて,もち粉とぬかと石灰を調合した特殊な糊(配合比は企業秘密)で,型紙に沿って輪郭を書き,天日で干し,乾燥後,色別に引き染めていきます。
十分乾燥させた後,水で糊を洗い落とし,出来上がり。

今では,この大きな五月幟を飾れる家も少なくなってきたため,生産量も減っているそうです。
昔のように,あちこちで五月幟がはためく情緒あふれる風景を見たいものです。

この五月幟を作る会社が,もう一つ伝統的工芸品を作っています。「大漁旗」といわれるもので,新造船の祝いなどに使われる,大漁祈願の晴れやかな旗です。120年以上の歴史があり,五月幟同様,全て手作業で作られて います。

今年の11月8日〜11日の4日間,鹿児島アリーナで,全国の伝統的工芸品が一堂に揃う「全国伝統的工芸品フェスタ IN かごしま」が開催されます。210品目の国指定の伝統的工芸品(本県では,本場大島紬,川辺仏壇,薩摩焼)とともに,県指定の伝統的工芸品も展示・販売されます。

今回紹介している薩摩糸びな,帖佐人形,垂水人形,五月幟,大漁旗もありますので,親から子へのあふれる思いや安全と大漁を願う気持ちを形にした逸品を見てください。

また,フェスタでは,「薩摩糸びな」の製作体験ができます。大切な人に思いを込めながらオリジナル作品を作ってみませんか。 

 
岩手県 岩谷堂箪笥
【伝統的工芸品/岩手県 岩谷堂箪笥】
 

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