全国伝統的工芸品フェスタINかごしま



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かごしまふぁんネットメール
シリーズ「伝統的工芸品の全国大会がやってくる!」

◆第12回 「和紙と織物」

県内には,和紙の原料となる楮(こうぞ)やカジノキが多く,藩政時代から和紙の生産が盛んに行われていました。しかし,明治初期には,大量生産の安価な洋紙に押され,次第に和紙は売れなくなり,それに伴い,和紙の作り手も減少しました。

そんな中,蒲生町とさつま町(旧鶴田町)では今でも伝統の技術を守り手漉きの和紙が作られています。

「蒲生和紙」,「鶴田和紙」と呼ばれるこれらの和紙は,楮等の皮を原料としており,寒い時期に刈り取った木を大釜で蒸して皮を剥ぎ,はぎ取った皮を天日乾燥をした後,貯蔵します。その皮を大釜で煮て,手間と時間をかけて灰汁を出し,冷たい清水に浸します。次に,きず摘みといわれる,裏表面の傷や不純物をつみ取る作業をします。この作業を怠ると,紙が美しく仕上がらないので,特に念入りに行います。
次に,叩解(こうかい)という繊維を解きほぐす作業をし,その後原料を撹拌します。

いよいよ,紙漉きの作業。
この作業は,とろろ葵の根などで作ったネリといわれる粘着材が必要になります。このネリを漉き漕に入れることにより,細かな繊維が漉き漕全体に均等に広がり,また,よく撹拌することで,同じ厚さの紙を漉くことができます。

漉き終わった紙は,重ねて一晩置き,水分を絞り出してから,乾燥機にかけます。天候や時間を問わず乾燥作業ができるよう,室内蒸気乾燥機を使用しており,紙の表面も一段と美しく仕上がります。

手間を惜しまず心を込めて漉きあげた和紙は,洋紙とは違う和紙ならではの質感と色味を持ち合わせ,また,手漉きのため,一枚一枚表情の異なる温かさが感じられます。そのうえ,長く絡まりやすい繊維を原料としているので,薄くても破れにくく,強くひぱっても丈夫。科学的にも酸やアルカリにも強く永久保存に向いていると証明されているだけあり,約1300年前に漉かれた和紙が,現在も正倉院に保存されています。虫に食われにくく,色褪せしない(黄ばみが少ない)という特長があります。

鹿児島といえば,本場大島紬が有名ですが,これにひけをとらない手作業で作られる昔から伝わる織物があります。「奄美の芭蕉布」と「甑島芙蓉布(こしきじまふようふ)」。

「奄美の芭蕉布」の芭蕉とは,温暖な場所に多く生息する植物で,バナナの木のような葉で,バナナのような実をつけます。この芭蕉の繊維を用いて織られる織物が「奄美の芭蕉布」。奄美では,明治時代まで,絹織物や木綿布等が庶民の手に入らなかったので,豊富に自生していた植物を利用しての芭蕉布が最も身近な織物で,盛んに生産されていました。

しかし,今では,芭蕉の繊維を取り出すのに大変な手間を要するため,生産者が激減しています。芭蕉布は,木綿に近い強さで風通しもよく,肌にべとつかないため,夏物衣料としては最適の織物。

「甑島芙蓉布」は,薩摩半島の西の海に浮かぶ甑島で生産されています。
島に多く自生していた芙蓉の木の皮を原料として衣服類を製作していました。和紙を作るような手順で繊維を抽出し,その繊維を手で紡ぎながら,機結びで繋ぎ,一本の長い糸を作ります。それを草木染めをし,織ります。できあがったものは,自然のやさしさにあふれた素朴な風合いがあります。

今年の11月8日〜11日の4日間,鹿児島アリーナで,全国の伝統的工芸品が一堂に揃う「全国伝統的工芸品フェスタ IN かごしま」が開催されます。210品目の国指定の伝統的工芸品(本県では,本場大島紬,川辺仏壇,薩摩焼)とともに,県指定の伝統的工芸品も展示・販売されます。

今回紹介している蒲生和紙,鶴田和紙,奄美の芭蕉布,甑島芙蓉布も展示されますので,昔から変わらぬ原料で,昔から伝わる確かな技を駆使して作られた,思いのこもった品物を見に来てください。

これらの品物を生活空間や身の回りの物にうまく取り入れて,自分流のスローライフを実現しませんか。

詳しくは,全国伝統的工芸品フェスタINかごしまホームページ(http://seitengai.com/dentou-festa/)を御覧ください。

 
岩手県 岩谷堂箪笥
【伝統的工芸品/岩手県 岩谷堂箪笥】
 

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