今回は,鹿児島県の隼人町にある鹿児島神宮にゆかりのある郷土玩具についてご紹介します。
鹿児島神宮は,神武天皇の時代から現存するといわれている,長い歴史のある由緒正しい神宮です。
この神宮にゆかりのある郷土玩具のうち県指定の伝統的工芸品は,「鯛車(たいぐるま)」,「香箱(こうばこ)」,「初鼓(はつつづみ)」の3つです。どれも素朴で,木の温もりが伝わり,また,鳥居を思わせるような赤い着色が目を引きます。時代を越えたロングヒットの要因は,赤や黄色など子供に好まれる原色を使っているところあるのでしょうか。これぞ,スローライフ玩具。
「鯛車」は,古事記に記されている海幸彦,山幸彦の神話に登場する赤女魚(鯛)を模して作られたといわれています,赤い魚の前後に木の枝を切っただけの車が四つ,足のようについており,また,くりっとした大きな目が何とも愛嬌があります。
鯛車を引っ張った時の頭を下げるような動きを,神話になぞらえて,のどに引っかかった釣り針を山幸彦にとってもらったことへのお礼を言っている様子だと言う説もあります。とても素朴でかわいい鯛車。眺めるほど,忙しい現代人をほっとさせてくれる不思議な魅力を感じます。
「香箱」もこの神話に基づいたもので,山幸彦と豊玉姫が結婚した時に姫が持参したきれいな化粧箱を見て,当時の女性がそれをまねて作り玩具にしたものだと言われています。釘を一本も使わず,糊で接着し,その上から和紙で補強してあります。
赤い箱全体に黄色の大きな花が大胆に描かれており,色の鮮やかさが印象的。当時の女性が,姫の美しい化粧箱に憧れていた気持ちが伝わってくるようです。
「初鼓」は,鹿児島神宮で奉納される初午祭(はつうまさい;首や鞍を鈴などで飾った馬を踊らせる祭り)の時に,鈴懸馬(すずかけうま)が鞍につける豆太鼓を小型化したもの。
ポンパチという愛称があり,いわゆる「でんでん太鼓」のようなものです。猿(不浄を去る)や馬や鳥居の絵が多く描かれていて,祭り当日は,厄払いや商売繁盛などの縁起物として売られます。私もポンパチ鳴らして,福を呼び込みた〜い!!
今年の11月8日〜11日の4日間,鹿児島アリーナで,全国の伝統的工芸品が一堂に揃う全国伝統的工芸品フェスタが開催されます。210品目の国指定の伝統的工芸品(本県では,本場大島紬,川辺仏壇,薩摩焼)とともに,県指定の伝統的工芸品も展示・販売されます。今日紹介した愛らしい玩具もありますので,是非,ご家族揃ってお越しください。 |