世界自然遺産の島,屋久島。この島で,樹齢1000年以上の杉を「屋久杉」と呼びます。
この屋久杉を原材料として製作しているのが,屋久杉製挽物,屋久杉製無垢物家具,屋久杉小工芸品などの屋久杉製品です。
そんなに貴重な屋久杉を伐採してもいいの?と心配する人もいるかと思いますが,屋久杉製品は,新たに木を伐採するのではなく,風倒木や土埋木等を利用しているので,自然環境へのダメージはありません。
標高1000メートルを超える山中から巨大な屋久杉を運び出すことは,ヘリコプターでないと困難なため,燃料代等の関係から,出来上がった品物の単価はどうしても高くなってしまいます。そのため,たんすやテーブル,仏壇など重厚感のあるものから,キーホルダーやしおり,お箸など小さなものまでさまざまな種類の品物を開発して,限られた資源を無駄なく利用しています。どれも屋久杉の木目や香り,質感をそのまま生かした,温かみのある品物ばかりです。
屋久杉が香り豊かなのは,普通の杉の10倍近い樹脂が含まれているせい。
風倒木が腐りにくく,何十年も経った今,屋久杉製品として加工できるのも,この樹脂の多さが影響しています。芳香ある樹脂のおかげで,製品化後も虫がつきにくいという特長を有しています。おがくずや木の皮から樹脂を抽出して作ったアロマオイルやお香などもあり,家庭で手軽に太古に誘う屋久杉の香りを体験することもできます。
次に,御紹介するのは,「薩摩つげ櫛」。
薩摩のつげは,狂いが小さく,材質が緻密で固いのが特徴。江戸時代中期,薩摩藩が木曾川の治水工事に従事したとき,薩摩に持ち込まれた櫛づくりが下級武士の内職として広まったものと言われ,「櫛になりたや薩摩の櫛に諸国娘の手に渡ろ」とうたわれるほど品質がよく,その名は全国に広まったそうです。
つげ櫛の製作には10くらいの工程があり,櫛の大きさに製材したつげの木を,自然乾燥した後,輪締めをして約3ヶ月間燻煙乾燥します。これにより,木の密度が高くなり,より硬くなるとともに,色・艶がよくなります。
さらに,10年程度自然乾燥させ,かんなやのこぎり等の道具を用いて,一本一本櫛を仕上げていきます。肌に直接触れるものだから,手間と時間をかけ,丹念に仕上げるとのこと。
こうして出来上がった「薩摩つげ櫛」は,歯が折れにくく,なめらかな櫛どおり。黄色くなめらかな肌は,年を重ねるにつれて,見事な光沢が出てきます。静電気がおこりにくいのが特長で,使い続けると,枝毛,切れ毛等が少なくなると評判。
最近では,櫛だけではなく,ブラシも製作販売されていますので,髪の毛の痛みに悩んでいる人は,是非お試しください。また,この「薩摩つげ櫛」は,来年1月から放映予定のNHK大河ドラマの主役「天璋院篤姫」も愛用していたともいわれています。
あなたも,薩摩つげ櫛を愛用して大奥の世界にタイムスリップしてみては。
この他,鹿児島県の山に多く自生する「あおつづらふじ」を使って製作されているものに,「つづら工芸」があります。昔話に出てくるような風情のある背負いかごや買い物かご等が作られていて,どこか懐かしさを覚えます。
今年の11月8日〜11日の4日間,鹿児島アリーナで,全国の伝統的工芸品が一堂に揃う全国伝統的工芸品フェスタが開催されます。210品目の国指定の伝統的工芸品(本県では,本場大島紬,川辺仏壇,薩摩焼)とともに,県指定の伝統的工芸品も展示・販売されます。
今回紹介している屋久杉製品,薩摩つげ櫛,つづら工芸もありますので,家族で出かけて,職人さんの技に触れ,木の素朴かつ重厚な味わいを感じてみませんか。 |