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かごしまふぁんネットメール
シリーズ「伝統的工芸品の全国大会がやってくる!」

◆第9回 「金属が主原料の伝統工芸品」

江戸時代に谷山で錫山が発見されてから,薩摩藩の重要な財源であった錫。

錫は,無害のうえ,イオン効果が高く,水等をまろやかにするという性質があります。
この錫を利用して製作され始めたのが「薩摩錫器」。

上品で静かな輝きを持つのが特徴。その製作工程は,まず,熱で溶かした錫(現在は,外国から輸入した錫を使用)を,代々受け継がれた鋳型に流し込み,大まかな型どりをします。これを旋盤で削って形を整えるのですが,この作業が,熟練の感覚と技を一番必要とするところ。熟練した職人は,削る音の変化で,厚みが分かると言い,手の微妙な力加減により,最適な薄さになるよう削っていきます。

特に,茶壺の製作は圧巻。茶壺の口に外ブタがかぶさって外気を遮断するのですが,逆に密着が強すぎると外ブタが抜けなくなってしまいます。ここに,ミクロの技が求められます。きつすぎずゆるすぎず,ぴたりと二つが合わさります。こうして削り終わったものに漆で絵付けをし,硝酸液に浸けると,絵付けをしたところ以外は梨地(梨のようなぶつぶつな肌)になり,絵付けした部分だけがくっきりと浮き上がります。

そして,最後に,磨いて仕上げます。こうして出来上がった「薩摩錫器」は,渋い光沢を放ち,重厚感にあふれ,また,手触りのなめらかさが特徴で人気があります。

鹿児島県は,砂鉄が豊富で,これを原材料としているものに「刀剣」があります。

武の国薩摩を象徴する伝統的工芸品ですが,今では,県北に位置する宮之城で藤田さん親子が製作しているだけ。刀剣に砂鉄が適しているのは,焼き刀の肌質の良さ,硬さが追求されるため。刀剣作りは,鉄を叩いて延ばし,折り返し,又,叩いて延ばして折り返すことを繰り返します。この作業が出来上がりの善し悪しを左右します。素早くかつ慎重に,力強く鍛錬を行い,1本1本丹誠込めて作り上げていきます。その刃の鋭さは想像以上。長さは70センチメートルから80センチメートルあり,見ているだけで背筋
が凍り付きます。源盛篤銘を刻まれたその刀剣は,焼き刀の沸え(にえ)と板目肌に特徴があります。

包丁やはさみ等の日常生活用品も,豊富な砂鉄を利用して,県内各地で生産され,現在でもその技術は受け継がれています。

「加世田鎌・加世田包丁」は,南薩が産地。槌の打ち跡が生々しく,荒々しい鋼の黒光りを持つのが特徴。鋼を軟鉄で包み,日本刀と同じように何度も何度も鍛えて仕上げます。武骨で分厚く,刃こぼれせず,切れ味が鋭いと定評があります。この包丁は,骨身などの固いものから野菜などの柔らかいものまで一丁でさばけるといわれています。

「種子鋏」,「種子包丁」は,県本土の南の洋上に浮かぶ種子島が産地。
この技術があったから鉄砲を作ることができたという話は有名です。切れ味の良さ,使い勝手の良さは折り紙付き。中間支点式のはさみを日本で最初に作り始め,現在も卓越した技術でプロに愛される品が作られています。

「薩摩深水刃物」は,鹿児島市で製作されています。原料の刃物鋼を使って,火造り鍛造・焼きなまし・泥塗り・焼戻し・研磨・錆処理という伝統的な技法で製造される包丁・鉈(なた)・鎌・藁切等の刃物で,すべて手作業で作られています。

これら刃物のほか,鉄を原材料としている伝統的工芸品に「甲冑」があります。戦国時代に使われていたものをほぼ忠実に再現しており,時代劇の撮影用や装飾用として重宝されています。甲冑の製作は分業制ですが,一連の作業を通しで行った場合,1つの甲冑を作り上げるまでに約3週間かかります。

鉄,革,組紐,彫金が主な材料です。出来上がった甲冑を間近でみると,兜や籠手などに思いもよらない細かい細工が施されています。また,小さな鉄板を組紐でつなぎ合わせたり,彫金で固定したりと一つ一つの細かい作業の積み重ねにより,威風堂々とした甲冑が作り上げられています。

今年の11月8日〜11日の4日間,鹿児島アリーナで,全国の伝統的工芸品が一堂に揃う全国伝統的工芸品フェスタが開催されます。210品目の国指定の伝統的工芸品(本県では,本場大島紬,川辺仏壇,薩摩焼)とともに,県指定の伝統的工芸品も展示・販売されます。

今回紹介している薩摩錫器,刀剣,加世田鎌・加世田包丁,種子鋏,種子包丁,薩摩深水刃物,甲冑もありますので,その良さを,是非,自分の目で確かめてください。

 
岩手県 岩谷堂箪笥
【伝統的工芸品/岩手県 岩谷堂箪笥】
 

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